ジャンル 芸術の世界

オンデマンド

【オンデマンド】運慶の事績と名声確立の検討

  • 秋講座

根立 研介(京都大学名誉教授、公益財団法人美術院理事長)

コード 930402
定員 25名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 15,840
ビジター価格 受講料 ¥ 15,840

目標

・日本文化の基礎となる鎌倉時代の文化がどのようなものであったか、この時代の初期を代表する仏師の事績と、その遺品を通して広い視野から理解する。
・鎌倉時代を代表する仏師運慶がどのような彫像を造られていたかを、主要な遺品と事績を追うことで当時の文化の理解を深める。
・当時の権門寺院や貴族、さらには新興の東国武家政権と深く結びついた運慶の主要仏像がどのような目的で造られ、造仏の世界にどのような影響を与え、さらには彼が仏師としての名声を如何に確立していったのかを知ることで、日本美術史の理解を深める。

講義概要

運慶は、日本で最も著名な仏師の一人であるため、数多くの著作が刊行されている。しかしながら、彼の仏像の素晴らしさは多くの人から語られているが、彼がどのような時代環境の下で仏像を造り、どのような人々のために仏像を造ったのかという事績については、意外に語られていない。彼は、畿内の権門勢力のみならず、東国武家政権の造仏を行っているが、当時の二大勢力の造仏を共に行った仏師は他には見当たらない。この講座では、運慶の事績を追いながら、彼がどのような環境で仏像を造っていたのか、また彼が目指した造形はどのようなものであったのか、さらには彼の名声がどのように確立されていったのかを語っていきたい。

各回の講義予定

講座内容
1 運慶のイメージ 仏師運慶は、日本で最も著名な仏師である。そのため、彼のイメージは数々の伝説に覆われているところがある。講座開始にあたり、現在の我々が運慶仏をどのように見ているのか、さらに歴史的には彼がどのような仏師として語られてきたかをまず確認しておきたい。
2 初期の活動:円成寺大日如来像と興福寺西金堂伝来釈迦如来像 運慶初期の事績を語る。最も初期の遺品とみられる奈良・円成寺大日如来像と、近年明らかになった興福寺西金堂伝来の釈迦如来像頭部ほかを詳しく検討する。文治年間(1185〜1190)の東国における造仏までの時期の活動を探る。
3 東国の2件の造仏 文治年間(1185〜1190)、運慶は東国の有力武将に関わる静岡・願成就院と神奈川・浄楽寺という二つの寺院の造仏を行う。その作風は、それ以前の運慶の作風と大きく異なっている。こうした造形が、何故生み出されたのかを、運慶と東国武将との関わりの中で考えていきたい。
4 建久年間の事績:東大寺と東寺の再興造仏の問題を中心に 建久年間(1190〜1199)、運慶は畿内の有力権門寺院、奈良の東大寺と京都の東寺の再興造仏に携わる。これら二大事業のこの時の遺品は全て失われているが、この二つの事業は運慶が慶派仏師の棟梁に就任する前の基礎作りとしてきわめて重要な事績である。これらの事績を丹念に検討していきたい。
5 金剛峯寺八大童子像と愛知・瀧山寺諸像の検討 高野山金剛峯寺八大童子像は、童子の実在の人物を思わせるような写実的な顔立ちもあって、人気の高い像であるが、運慶はこうした写実的な彫刻を何故造り上げたのであろうか。この問題を中心に、建久末年頃から建仁3年(1203)の東大寺南大門金剛力士像造像に至る時期までの事績を追っていきたい。
6 東大寺南大門金剛力士像の造仏 東大寺南大門金剛力士像(仁王像)は、ある意味日本で最も有名な仏像である。運慶は、この仁王像を、快慶や湛慶、定覚ととも二ヶ月あまりの短期間に造り上げている。こうした短期間で、何故この巨大な仁王像を完成することが出来たのであろうか。この仁王像の数々の謎に迫りたい。
7 興福寺北円堂諸尊像の造仏 建暦2年(1212)、運慶は一門の仏師を率いて弥勒仏像、無著・世親像などの興福寺北円堂の諸仏を造っている。これらの像は、運慶晩年の最高傑作として名高いが、興福寺再興造仏事業の事業の最終段階の時期の作で、興福寺寺家や摂関家が造仏に深く関与している。これら優れた仏像が造られた背景を探ってみたい。
8 最晩年期の造仏の検討と運慶の名声確立の問題の再検討 運慶の最晩年期は、現在知られている史料では、鎌倉幕府関係の造仏に限られている。この時期は、朝廷と幕府の対立が顕在化して承久の乱(1221)に至る時期と重なる。何故、運慶は幕府関係の造仏に専念していったのか、この問題を中心に考えていきたい。そして、この講座を終わるに当たって、運慶の名声が如何に確立していったのかを再び問うことにしたい。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2024/08/27)から学期終了翌月末(2025/01/31)までになります。一般申込開始(2024/08/27)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2024年度 春期 「運慶の事績と名声確立の検討」 (04/03〜05/29 水曜日、全8回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

根立 研介
京都大学名誉教授、公益財団法人美術院理事長
文化庁文化財調査官なども経験し、各地の文化財を調査する。専門は、日本彫刻史。特に仏像制作者である仏師研究や肖像彫刻研究などに成果を挙げる。著書に『日本中世の仏師と社会』などがある。また、『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代造像銘記篇』の編纂などにも関わり、日本彫刻史の基礎資料集の刊行にも尽力している。
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