ジャンル 芸術の世界

オンデマンド

【オンデマンド】スキャンダルのイギリス史・近世篇

  • 秋講座

齊藤 貴子(早稲田大学・上智大学大学院講師)

コード 930403
定員 25名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 11,880

目標

・当時の世間を騒がせ、後世まで語り継がれてきた歴史的スキャンダル (事件、事故、情事etc.)をつうじてイギリスを知る。
・イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の歴史を芸術的観点から考察する。
・イギリスを例にスキャンダリズムのありようについても可能な限り理解と考察を深める。

講義概要

古の昔から21世紀の今日に至るまで、イギリスという国はスキャンダルに事欠きません。政治・経済の分野は言うに及ばず、宗教や芸術といった文化方面でも、歴史上のエポック・メイキングとなるような重大な不祥事がいくつも起こってきました。そしてまた、たとえ王室だろうと官邸だろうと、対象を常に同じまな板の上にのせ、実際に起こった出来事を正しく伝えることで、良くも悪くもスキャンダリズムを貫いてきたのがイギリスという国でもあります。本講座では、中世から現代までの各種歴史的なスキャンダルをつうじて、イギリスという国そのものへの理解と関心を深めていきます(今回は16世紀に起こったスキャンダルの数々を取り上げます)。

各回の講義予定

講座内容
1 王の離婚?〜イギリス王室史上最大のスキャンダル〜 諸侯が互いに相争う中世の血みどろの内乱「薔薇戦争」にようやくひとつの終止符が打たれ、勝者ヘンリー・テューダーが新たにヘンリー7世として即位して久方ぶりに英国内に訪れた「テューダーの平和」。しかしながら、その平和は子であるヘンリー8世の代になると再びかき乱され、イングランドは内外に大いなる痛みをともなう「宗教改革」を経験することになります。16世紀イングランドに宗教改革が起った原因は決してひとつではなく、多分に政治経済的事由から誘発されたものではありますが、その最大の要因かつ直接の契機となったのが国王ヘンリー8世の離婚問題であることは事実です。まずは当時における「王の離婚」の可否からはじめて、このイギリス王室史上最大のスキャンダルの顛末について様々な角度から再考します。
2 修道院解散〜恐れるべきは宗教的熱狂〜 時の国王ヘンリー8世の離婚問題に端を発し、大陸の新潮流にならうが如く断行された16世紀の宗教改革。ローマ教皇を頂点とするカトリックから離脱し、今に続く独自の「イングランド国教会」を樹立したことで得たものは確かに多々ありますが、歴史文化的観点からみれば、それ以上に失ったものははかりしれません。後世の立場を強みに、当時のカトリック/プロテスタントどちらの立場にも可能な限り偏ることなく、イギリス宗教改革にともない行われた「修道院解散」の具体的事例を通して、国家そのものが「宗教的熱狂」に陥ることの罪深さについて努めて客観的に考えてみたいと思います。
3 女王に必要な男① ヘンリー8世の次女エリザベス1世がめぐりめぐって女王の座についた16世紀後半のイングランドは、いわゆる国家の黄金期を迎えたといわれています。しかしそれは、エリザベス1世自身の功績というより、彼女という女王を支える臣下によってもたらされた側面があることは否めません。偉大な父王、夭折した弟王、そして頑迷な姉王の後に登場したエリザベス1世が求めた臣下とは一体いかなる種類の人間だったのか。実際に影日向となり、女王を支えた男性たちについて具体的に紹介します。
4 女王に必要な男② エリザベス1世は生涯結婚することなく、国家と結婚したとも言われる女王ですが、もちろん彼女にまったく男性関係がなかったわけではありません。しかし、彼女の恋愛のはじまりとおわりにはいつも重く「王冠」がのしかかり、王位継承権をもつ王女あるいは女王であることが、いついかなるときもひとりの女性としての彼女を悩ませ苦しめていたと言っていいでしょう。それでもひとりの「女性」ではなく類まれなる「女王」として生きる道を、恐らくは他ならぬエリザベス1世自身が選んだに違いないということを、彼女の恋人と噂された複数の男性たちとのエピソードを辿ることで確かめていきたいと思います。
5 もうひとりのエリザベス:「ハードウィックのベス」ことシュールズベリー伯爵夫人エリザベス・タルボット① 16世紀テューダー王朝の女性たちといえば、ヘンリー8世が生涯にむかえた6人の王妃や、彼女たちとのあいだにもうけた2人の王女――そのひとりであるエリザベス1世が何といっても有名です。しかしながら、このエリザベス1世とまったく同じ時代に同じ名をもって生まれ、何の因果か生涯に4人もの夫をもち、死別しては再婚を繰り返すことで期せずして女王にも勝る巨万の富を得た貴婦人がいたことは、日本ではあまり知られていません。その富によってイギリス歴史文化に多大なる足跡をのこしたもうひとりのエリザベス、「ハードウィックのベス」ことシュールズベリー伯爵夫人エリザベス・タルボットについて紹介します。
6 もうひとりのエリザベス:「ハードウィックのベス」ことシュールズベリー伯爵夫人エリザベス・タルボット② エリザベス・タルボットの4番目の夫である第6代シュールズベリー伯爵が、イングランドに亡命してきた元スコットランド女王メアリー・ステュアートの監視役となったことから夫婦間には生涯埋まらぬ溝が生まれ、数珠つながりに様々な問題が発生していきます。「ハードウィックのベス」という異名の生まれる元となったハードウィック・ホールやチャッツワース・ハウスなど、エリザベス・タルボットの財力によって建てられたイギリスを代表するカントリー・ハウスを転々としたメアリー・スチュアートの優雅な軟禁生活と、そこで繰り広げられたと思われる男女間の心理的駆け引き、そしてそのなかから生まれた類まれな刺繍芸術にまで思いを馳せることで、貴族制度や建築美術をも含めたイギリス歴史文化における「もうひとりのエリザベス」の存在の大きさを再認識したいと思います。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2024/08/27)から学期終了翌月末(2025/01/31)までになります。一般申込開始(2024/08/27)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2024年度 春期 「スキャンダルのイギリス史・近世篇」 (04/10〜05/22 水曜日、全6回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

齊藤 貴子
早稲田大学・上智大学大学院講師
早稲田大学教育学部英語英文学科卒、同大学院教育学研究科博士課程修了後、助手を経て現職。専門は近代イギリス文学・文化。主として詩と美術の相関を研究。『ラファエル前派の世界』(東京書籍)、『英国ロマン派女性詩選』(国文社)、『肖像画で読み解くイギリス史』(PHP研究所)、『イギリス恋愛詞華集―この瞬間を永遠に―』(研究社)など著訳書多数。
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