ジャンル 文学の心

早稲田校

漱石文学の世界

  • 春講座
  • オムニバス

中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
藤尾 健剛(大東文化大学教授)
安藤 文人(早稲田大学元教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
松下 浩幸(明治大学教授)
石原 千秋(早稲田大学教授)
長島 裕子(秀明大学客員教授)
服部 徹也(東洋大学准教授)

曜日 土曜日
時間 10:40~12:10
日程 全8回 ・04月12日 ~ 06月21日
(日程詳細)
04/12, 04/19, 04/26, 05/10, 05/17, 05/31, 06/14, 06/21
コード 110118
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・漱石の魅力をさまざまな角度から明らかにしていきます。
・漱石と関連する文学者にも幅広く眼を注ぎ、漱石を立体的に考えます。
・作品分析の面白さを実感していきます。

講義概要

昨年の秋学期で『それから』までを扱いましたが、今期はその時期の『永日小品』から始め、満韓旅行、長編『門』、そして修善寺の大患、それを振り返った『思ひ出す事など』までを扱いたいと思います。テーマにふさわしい講師にお願いし、『永日小品』『門』については各2名をお願いしました。今回は石原千秋、松下浩幸、服部徹也、藤井淑禎、藤尾健剛、安藤文人、長島裕子、中島国彦の8名で、それぞれの視点からこの時期の作品の魅力、問題点を明らかにしていきます。作品をお手元において、ご一緒に漱石の世界に入っていただけましたら幸いです。(企画・中島国彦早稲田大学 名誉教授)

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/12 「永日小品」の社会的関心 「夢十夜」と違って、「永日小品」には漱石の社会的関心を反映した作品が少なくない。そのような作品から、「人間」「声」「金」「心」「変化」の5編を取り上げる。「人間」を除く4編は、末尾近くに連続して配置されている。隣り合う作品どうしが共鳴しあって、新たな意味を派生させる点も「永日小品」の特徴で、「声」以下の作品がどのように響き合っているかについても触れたい。(藤尾健剛)
2 04/19 『永日小品』の中の英国 「倫敦に住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり」(『文学論』序)と述べた漱石は、実際英国での体験をあまり多く書き残してはいない。『永日小品』はその例外で、滞英生活に取材した文章は二十九編中九編に及んでおり、全著作を通じてもここに集中している感がある。しかし、それらの作品から、作者漱石のむき出しの「不愉快」を感じ取ることは難しい。講義では、留学中に書かれた日記や『倫敦消息』などと比較しながら、職業作家となった漱石が自己の「体験」をどのように「作品」に昇華させていったか、その作意と工夫を探っていきたい。(安藤文人)
3 04/26 「満韓ところどころ」の先を読む 「満韓ところどころ」は、9月21日に撫順を訪れたところまでを書いて、明治42年の年末で打ち切られた(連載開始は10月21日)。実際の満韓の旅は、その後、ハルビン、長春、何度目かの奉天を経て朝鮮に入り、9月30日から10月13日までは現在のソウルに滞在したのだから、タイトルの満韓うんぬんは明らかに看板に偽りあり、である。こうなった理由には諸説あるが、穏当なのは、二か月以上も連載してもう大晦日になってしまったから、であろう。当時の新聞界にすでに、年頭からは新連載をスタートさせる慣習ができつつあったこともこれを補強している。ただ、書かれなかった「その先」を読めないわけではない。日記であり、二、三通の書簡である。今回はあくまでもこれらの紹介が主だが、「その先」に何らかの収穫があるかもしれない。それは聴いてのお楽しみに。(藤井淑禎)
4 05/10 『門』―オブセッションとしての東アジア 淡々とした夫婦の日常を描いているかに見える『門』の物語世界において、宗助たちが茶の間で語る伊藤博文の暗殺事件という話題は、少々奇異な感じを受ける。このトピックスは『門』という小説において、単なる一つのエピソードに過ぎないのだろうか。同時代の東アジアの状況と『門』との関連を視野に入れながら、漱石が描く東アジアの表象を、オブセッション(強迫観念)という視点から考えてみたい。(松下浩幸)
5 05/17 「朝日文芸欄」の評論から 明治43年、漱石は「朝日文芸欄」に、「文芸とヒロイツク」「艇長の遺書と中佐の詩」「イズムの功過」など、短文ながら興味深い内容の評論を発表しています。単行本では『切抜帖より』(明治44年8月、春陽堂)に収められました。これらの発言の基盤は何か、文芸委員問題との関わりはどうか、などの視点から、これらの評論について考えてみたいと思います。(中島国彦)
6 05/31 ゲシュタルト(全体像)の崩壊—『門』 どう考えても、何度読んでも、漱石は個人とか私というものを信じられなかったように思えてなりません。常にそれを書き続ています。『門』では人生コースの喪失や身体の不調として個人のゲシュタルトの崩壊を書いていますが、それゆえに、逆に何をゲシュタルトと想定していたかもはっきり見えてきます。『門』のあとに書かれた後期三部作では内部からゲシュタルトが崩壊する人物を書きました。『門』のゲシュタルト崩壊はまだ社会性を持ってた点にも注意したいと思います。(石原千秋)
7 06/14 修善寺の大患—坂元雪鳥の「修善寺日記」を手がかりに— 明治43年8月、漱石の修善寺での大吐血の日とその前後の日々を、克明に綴られた坂元雪鳥の「修善寺日記」を手がかりに考えてみたいと思います。漱石自身の日記、鏡子夫人の日記や書簡のほかに、朝日新聞社から修善寺に派遣された雪鳥が残した日記を通じて、修善寺での漱石の姿を別の角度からとらえることができると思います。(長島裕子)
8 06/21 郵便文学としての『思ひ出す事など』 胃潰瘍により一時危篤となった漱石の様子は、電報やハガキ、雑音だらけの長距離電話によって伝えられ、新聞によって全国へ報じられた。いわゆる修善寺の大患の記憶を薄れる手前で書き留めようとした『思ひ出す事など』は、新聞社の通信網に支えられただけでなく、満州からの電報や大雨による郵便配達の遅延、心をなぐさめる歌麿の絵葉書など、無数の通信を織り込んで成り立っている。近年研究が進みつつある関係者の書簡を踏まえて、郵便が可能にした文学表現という観点からこの随筆を再解釈する。(服部徹也)

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆各回担当講師・担当回・各回講義内容は変更となる場合があります。

講師紹介

中島 国彦
早稲田大学名誉教授
1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。

藤尾 健剛
大東文化大学教授
1959年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科修士課程修了。香川大学助教授をへて、現職。著書に、『夏目漱石の近代日本』(勉誠出版)、『川端康成 無常と美』(翰林書房)がある。
安藤 文人
早稲田大学元教授
岐阜県生まれ。早稲田大学第一文学部、同大学院において英文学を専攻した後、比較文学に転じ、英国18世紀作家ロレンス・スターンが漱石の初期作品に与えた影響について研究を続けている。文学学術院において英語科目を担当。英語関係の著作に『アウトプットに必要な英文法』(研究社)他がある。
藤井 淑禎
立教大学名誉教授
愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
松下 浩幸
明治大学教授
専門分野は日本近現代文学。著書に『夏目漱石―Xなる人生』(NHK出版)、共著に『夏目漱石事典』(勉誠出版)、『異文化体験としての大都市―ロンドンそして東京』(風間書房)、『日本近代文学と〈家族〉の風景―戦後編』(明治大学リバティアカデミー)など。
石原 千秋
早稲田大学教授
1955年、東京都生まれ。成城大学文芸学部卒業、同大学院博士後期課程中退(文学修士)。東横学園女子短期大学助教授、成城大学教授を経て、現職。著書『漱石と三人の読者』(講談社現代新書)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『漱石入門』(河出文庫)、 『漱石はどう読まれてきたか』(新潮選書)など。
長島 裕子
秀明大学客員教授
早稲田大学大学院修士課程修了。現在、秀明大学客員教授。専門分野は日本近代文学。著書に、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『文章の達人 家族への手紙4 夫より妻へ』(編著、ゆまに書房)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)がある。
服部 徹也
東洋大学准教授
1986年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。同大学院文学研究科助教(非常勤)、大妻女子大学非常勤講師、大谷大学助教等を経て、現職。専門は日本近代文学・文学理論。共著に小平麻衣子編『文芸雑誌「若草」:私たちは文芸を愛好している』(翰林書房)など。
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