ジャンル 世界を知る
早稲田校
ケルト神話の世界
倉嶋 雅人(翻訳家)
曜日 |
金曜日 |
時間 |
13:10~14:40 |
日程 |
全8回
・04月11日 ~
06月06日
(日程詳細) 04/11, 04/18, 04/25, 05/09, 05/16, 05/23, 05/30, 06/06 |
コード |
110308 |
定員 |
28名 |
単位数 |
1 |
会員価格 |
受講料 ¥
23,760 |
ビジター価格 |
受講料 ¥
27,324 |
目標
・ケルト神話の全体像を把握し、独特な世界観・運命論などを知る
・物語と地図・画像・音楽から「ケルト的感性」を実感する
・神話を通じてアイルランドとウェールズの地誌・風土を理解する
講義概要
本講座ではアイルランドの神話(神話物語群、アルスター神話群、フィン物語群、航海譚)とウェールズの神話(『マビノギオン』)を解説します。アイルランドに来島した6種族交代劇、光の神ルーと独眼の悪魔の決戦など神々の大戦争、英雄クー・ホリンの誕生・修行・恋・戦い・死、フィアナ騎士団の首領フィンの活躍、楽園を目指す航海と西洋版浦島伝説、ウェールズの魔法世界、アーサー王物語の原型など、ケルト神話を広く深く語ります。「神話の現場」(神々の上陸地、住まい、戦場ほか)を巡るヴァーチャルな神話ツアーやアイルランド音楽など、ファンも初心者の方も、見て・聞いて・感じてお楽しみください。
各回の講義予定
回 |
日程 |
講座内容 |
1 |
04/11 |
ケルト神話の特殊性……ケルト研究の歩みとその見直し |
ケルト神話は日本人の心情にも通ずる感性やその自然観、神々や英雄が大活躍する物語の面白さなどで、私たちを魅了します。第1回は、なぜアイルランドとウェールズの神話が「ケルト神話」と呼ばれるのか、その理由を説明します。ヨーロッパ大陸には神の像が残されているのに神話がなく、アイルランドには神話が豊富なのに神の像がないという不思議さ、天地創造神話がなく、キリスト教の修道士によって記述された「異教の神話」であることなど、ケルト神話の極めて特殊な成り立ちを平易に解説します。 |
2 |
04/18 |
神々と魔族の戦い……アイルランドの神話1:神話物語群 |
アイルランド神話は「神話物語群」「アルスター神話群」「フィン物語群」の3つのグループで構成されています。この回は、アイルランドの『古事記』にあたる『来寇の書』が伝える6種族交代劇を紹介します。特にダーナ神族が先住種族や魔族と戦う2つの戦争物語は最も面白く、神々のリーダーのダグザ、光の神ルー、工芸を司る3神、怪光線を放つ一つ目の魔人などを詳しく語ります。各種族の上陸地点や戦場と伝えられる場所を豊富な地図と写真でたどる「神話ツアー」へとご案内します。 |
3 |
04/25 |
白鳥と英雄クー・ホリン……アイルランドの神話2:アルスター神話群 |
「オインガスの夢」「ミディールの求婚」「白鳥になったリールの子どもたち」の3編は神々の恋愛や悲しい運命などを語るロマンティックな物語ですが、そのどれにも白鳥が登場しています。そして「アルスター神話群」では、アイルランド最大の英雄クー・ホリンが活躍します。不思議な誕生、猛犬を倒して得たあだ名、修行時代や愛と友情など、試練を経験した美しく猛き英雄は、隣国コナハトとの戦争で故国アルスターのために孤軍奮闘し、悲劇的な最期を迎えます。 |
4 |
05/09 |
鹿の勇者と愛の呪い……アイルランドの神話3:フィン物語群 |
少年フィンは、修行の旅の途中で偶然「知恵の鮭」を口にして、膨大な知識を得ます。長じたフィンは火を吐く巨人を倒して亡き父が創設したフィアナ騎士団を引き継ぎます。「鹿の技」を身に着けた戦闘部隊、鹿に変身させられた息子オシーン、常若(とこわか)の国ティル・ナ・ノグ、古代ヨーロッパに登場する鹿の王などを紹介します。後半では、「ノイシュとディアドラ」「ディルムッドとグラーニャ」という2編の悲恋ロマンスを紹介し、その中世文学への多大な影響などを解説します。 |
5 |
05/16 |
楽園をめざして西の海へ……アイルランドの航海者たち |
アイルランドには未知の島を目指す冒険譚・航海譚が伝えられています。謎の美女に誘われて主人公が異界に向かう「コンラの冒険」と「ブランの航海」、続いて「ガリバー旅行記」にも似た、不思議な島々を巡る「マールドゥーンの航海」を紹介しますが、これらの航海譚と日本の浦島伝説は驚くほどその内容が似ています。最後に紹介する「聖ブレンダン航海記」は特に有名で、彼の冒険は実際に行われ、聖ブレンダンはコロンブス以前にアメリカ大陸に到達した最初の人物と見なされているのです。 |
6 |
05/23 |
魔法世界と衰弱した神々……ウェールズの神話:『マビノギオン』の1〜4枝 |
ウェールズ神話を伝える『マビノギオン』から、主要4編(マビノギの1〜4枝)を紹介します。どれもが不思議な魔法世界の話ですが、大きな特徴は、主人公の神々が不条理な運命に翻弄され、弱々しい姿を見せるところです。「異界の王と虐待される馬の女神」「アイルランド対ウェールズの大戦争と巨人王の放浪」「領地を失った王の職業遍歴」「非情な母と邪悪な花嫁によって衰弱する光の神」など、不思議なことが次から次へと起こる、不条理でグロテスクな物語の、異質さゆえの魅力を解説します。 |
7 |
05/30 |
皇帝アーサーの大冒険……ウェールズのアーサー王ロマンス |
『マビノギオン』に収録されたアーサー王ロマンス5編を紹介します。「キルッフとオルウェン」は、ウェールズ文学で初めてアーサー王とその家臣たちが登場する作品ですが、アーサー王と特殊能力をもつ家臣たちが力を合わせて怪物と戦う冒険は痛快で、どこか「西遊記」を思わせます。また「アーサーの宮廷の三つのロマンス」は、同時期にフランスで発表された3作品と内容が酷似している点で大きな論争を呼んでいます。これらウェールズのアーサー王物語の原型について考察していきます。 |
8 |
06/06 |
神話文学と考古学のあいだ……神々の造形とモチーフの意味 |
最終回は、文学ではなく歴史学・考古学の立場から、神話が残されていないケルトの神々について考察します。『ガリア戦記』でカエサルが言及した6神、ローマの詩人ルカヌスが記した3神、さらにガリアとブリテン(フランスと英国)で見られる「ケルトの神々」の造形例、地上絵に描かれた白馬と巨人などを紹介します。後半は、「再生の大釜」「3という魔法の数字」「人頭の信仰」「異界はどこにある」「ケルトの暦」などの各テーマを解説し、日本神話との比較考察も行います。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆ 休講が発生した場合の補講日は6月13日を予定しています。
講師紹介
- 倉嶋 雅人
- 翻訳家
- 1955年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。主な訳書にヘイウッド『ケルト歴史地図』 、ギフォード『ケルトの木の知恵』、オルドハウス=グリーン『ケルト神話』、ハースト『超約ヨーロッパの歴史』(増補版も含む)、ペスケ『手の中の地球 国際宇宙ステーションから見た私たちの星』、共訳書にスミソニアン協会編『地球博物学大図鑑』、コルナバス『地政学世界地図』など。