ジャンル 人間の探求

中野校

贈与論とポスト資本主義 贈与交換、コミュニズムとアナキズム、脱構築

  • 夏講座

岩野 卓司(明治大学教授)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全3回 ・07月25日 ~ 09月05日
(日程詳細)
07/25, 08/01, 09/05
コード 320501
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 8,910
ビジター価格 受講料 ¥ 10,246

目標

・資本主義と贈与についての理解を深める。

講義概要

現代のグローバル資本主義は、非正規雇用の増大、環境の危機、グローバルサウスの搾取、無縁社会など多くの弊害をもたらしている。近年、行き過ぎた資本主義を修正するために、マルセル・モース以来の贈与の思想が注目されている。この講義では人類学者モース、レヴィ=ストロース、グレーバー、社会思想家クロポトキン、哲学者デリダの思想を贈与との関係から読み直し、彼らの問題提起を踏まえながら、資本主義を変容させるために贈与がどこまで有効なのかを探っていく予定である。贈与論の未来への可能性を考えていきたい。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/25 贈与交換について:モース『贈与論』とレヴィ=ストロース『親族の基本構造』 お中元やお歳暮といった慣習では、贈与にお返しはつきものである。これを贈与交換と呼ぶのだが、この交換を最初に解明したのはマルセル・モース『贈与論』である。クロード・レヴィ=ストロースはモースの考えを継承し、『親族の基本構造』で先住民社会の婚姻の規則を贈与のシステムとして提示していった。ここでは「贈与交換」はどういうものであるかを考察していく。
2 08/01 コミュニズムとアナキズム:クロポトキンの相互扶助とグレーバーの基盤的コミュニズム ソ連と東欧の共産主義体制の崩壊後、コミュニズムは力を失っていった。かわって力をもっていったのは、グローバル資本主義である。しかし、その行き過ぎた資本主義が多くの問題を引き起こしている。そこで今注目されているのが、アナキズムの相互扶助の思想、それから人間の根本的なつながりを求めるコミュニズムである。両方とも贈与論と深く結びついているので、贈与との関係から考察していく。
3 09/05 ジャック・デリダの贈与論と脱構築 ジャック・デリダは彼自身の哲学である脱構築の視点から贈与や歓待について論じている。それは、西欧哲学の根本にある形而上学の発想を批判することにおいて有効であるだけではなく、資本主義をどう変えていくべきかを考えるのにも有益である。特に、資本主義のオルタナティブについてどう考えていくべきかを論じる場合に必要不可欠な議論を提出している。授業では、贈与と脱構築の関係について講義する。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆参考図書:岩野卓司著『贈与論―資本主義を突き抜けるための哲学 』(青土社)、岩野卓司著『贈与をめぐる冒険 新しい社会をつくるには』(ヘウレーカ)、マルセル・モース著『贈与論』森山工訳(岩波文庫)、クロード・レヴィ=ストロース著『親族の基本構造』福井和美訳(青弓社)、ピョートル・クロポトキン『相互扶助論』大杉栄訳(同時代社)、デヴィッド・グレーバー著『負債論』酒井隆史他訳(以文社)、ジャック・デリダ著『他者の言語』高橋允昭編訳(法政大学出版局)

講師紹介

岩野 卓司
明治大学教授
博士(哲学) 哲学、宗教、文学、人類学などの領域を横断的に探究し続けている。著作に『ジョルジュ・バタイユ』(水声社)『贈与論―資本主義を突き抜けるための哲学』(青土社)『贈与をめぐる冒険 新しい社会をつくるには』(ヘウレーカ)など、編著に『共にあることの哲学』『共にあることの哲学と現実』(以上、書肆心水)、『はじまりのバタイユ』『野生の教養』『野生の教養II』(以上共編著、法政大学出版局)など、訳書にジャック・デリダ『そのたびごとにただ一つ、世界の終焉I・II』(岩波書店)、『バタイユ書簡集』(水声社)(すべて共訳)などがある。

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