ジャンル 人間の探求
中野校
美と愛(エロース)の哲学―プラトン『饗宴』を読む
荻野 弘之(上智大学教授)
曜日 | 火曜日 |
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時間 | 10:40~12:10 |
日程 |
全5回
・07月22日 ~
08月26日 (日程詳細) 07/22, 07/29, 08/05, 08/19, 08/26 |
コード | 320505 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 14,850 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 17,077 |
目標
・哲学とは何をどのように問う学問なのか、おおまかなイメージを掴む。
・古代ギリシアの代表的な哲学を、実際に作品の読解を通じて、知る。
・我々自身の日常の、ものの見方、感じ方を少しだけ変えてみる。
講義概要
「美しい人に惹かれる」という、ありふれた(また時としては劇的な)経験は、突き詰めると一体なぜ起こるのでしょうか。プラトン『饗宴』は、酒宴の席に参集した様々な人物が順番にエロース(恋愛の神)を賛美するという趣向で、愛とは何か、美とは何か、についての思索を深めていく、文学性豊かな哲学の古典です。その中でソクラテスという謎の人物の正体も明らかにされていく、ミステリーのような仕掛けも施されています。実際の作品をていねいに読みながら、プラトンの作劇手法を味わい、様々な問題を考えていきます。絵画や小説など後代への影響史も目配りします。深くて楽しい哲学の不思議な世界です。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 07/22 | 謎の人物ソクラテスと劇作家プラトン | 『饗宴』を読むための序章。作者や主要登場人物、作品の性格について紹介します。「饗宴」という舞台設定や当時の風習、後代の「饗宴文学」への影響についても学びます。 |
2 | 07/29 | さまざまな「愛」の姿 | エロースとはどういう神なのか?をめぐって、論戦が繰り広げられます。神話と歴史はどういう関係にあるか。ギリシア的少年愛はいかにして擁護されるのか。人間を超えた自然界にも見られる「愛憎」の現象をどう理解すべきか。論題は多岐にわたります。読者にも思い当たる節があるでしょう。 |
3 | 08/05 | 愛の喜劇と悲劇 | 人間はもともと球体だったのに、ゼウス神に反抗したために切断されてしまった、という奇想天外な神話(喜劇作家アリストパネス)。美しさの極みにある愛の神を讃える演説自体が詩的に洗練された美しさに包まれる(悲劇作家アガトン)。光り輝くクライマックスはソクラテスの論駁によって暗転します。 |
4 | 08/19 | エロースの起源 | ソクラテスがかつて教えを受けたという謎の巫女ディオティマによって、愛の道行きの秘義が語られます。ひとが美しいものに憧れるのは、死すべき者が永遠の生命を希求するからなのだ。永遠を忘れた現代人は、この託宣をどのように受け取ることができるでしょうか。 |
5 | 08/26 | エロースの化身ソクラテス | 酒宴の最中に乱入してきたソクラテスの愛人にして酔漢アルキビアデス。悪の強い問題児の登場によって、奇妙な哲人の秘密が暴露されていきます。一晩中立ち尽くすソクラテスは一体何を見ていたのでしょうか。謎は深まるばかりです。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆実際に作品を読んでみる授業なので、各回ごとに、文庫本20-30頁ほどの「予習」が必要です。内容はさほど難しくありません。
◆参考図書:荻野弘之著『哲学の饗宴 ソクラテス・プラトン・アリストテレス』NHK出版(ISBN:978-4140841587)
テキスト
テキスト
プラトン(中澤務訳)『饗宴』(光文社古典新訳文庫)(ISBN:978-4334752767)
講師紹介
- 荻野 弘之
- 上智大学教授
- 1957年東京生まれ。東京大学大学院博士課程中退。上智大学教授(早稲田大学大学院非常勤講師)。西洋古代・中世哲学専攻。プラトン、アリストテレス、ストア派、キリスト教教父思想などを題材に、心の哲学や倫理思想を研究する。最新刊は『新しく学ぶ西洋哲学史』(共著・ミネルヴァ書房)。