ジャンル 現代社会と科学
早稲田校
自然と歴史からさぐる「日本列島のめぐみ」
川幡 穂高(早稲田大学客員教授、東京大学名誉教授)
曜日 | 水曜日 |
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時間 | 10:40~12:10 |
日程 |
全6回
・04月09日 ~
05月21日 (日程詳細) 04/09, 04/16, 04/23, 05/07, 05/14, 05/21 |
コード | 110711 |
定員 | 70名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・自然のみならず考古や歴史などの関連事項を総合的に理解する。
・テーマごとに、将来の影響なども考える。
講義概要
私たちはアジアの東の端、太平洋の西の端に位置する日本列島に生活している。今回は「列島のめぐみ」に焦点をあてる。本講座では、まず日本列島の成立や列島周辺の気候・環境に関する最新の情報を理解する。そして、「東北地方の形成史と芭蕉がたずねた場所の特徴」「奈良の大仏の造営にも関係する黄金の国ジパングの始まり」「世界的にも稀有な温泉文化」「将来のカーボンゼロに期待される地熱資源」「黒潮がもたらす亜熱帯環境とサンゴ礁」「黒潮から分岐した対馬暖流が鍵となる豪雪と米作」などのトピックスを扱い、「日本の自然のめぐみ」を自然と歴史からさぐる。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/09 | 日本列島の成り立ち:芭蕉が歩いた『おくのほそ道』は1500万年前の陸と海の境界 | 東日本を中心に日本列島の成り立ちを追う。1500万年前の東北日本の地形は、現在と全く異なり広範囲に水没していた。当時大きな陸地であったのは、現在の北上山地と阿武隈山地である。松尾芭蕉は1689年、弟子の曾良(そら)と東北・北陸地方に旅に出た。これは『おくのほそ道』として紀行作品となっている。彼らは尊敬し憧れる西行と同じ景色を見ることが目的だったらしい。その旅ルートを1500万年前の地形に重ねて、地質学的な背景を考慮すると、ルートのほとんどは1500万年前には陸と海の境界あるいは海であったことがわかった(伊藤孝教授)。多くの句は日本列島が大陸から分離した後に陸化した場所で詠まれていた。 |
2 | 04/16 | 日本列島と金鉱山:奈良の大仏とジパングの始まり | マルコ・ポーロが「東方見聞録」の中で紹介した宮殿と推測されるのが「中尊寺金色堂」である。それは名前のとおり建物の内外から木製の瓦まで金箔で覆われていた。奈良時代中期は、地震、かんばつ、天然痘、貴族の反乱などが相次ぎ、不安定な世の中であった。聖武天皇は「仏教の力でこの国を救おう」と思い「詔」を743年に出して、国民に大仏造りへの協力をよびかけた。青銅製の大仏が錆びずに、永遠に輝くよう「金メッキ」が予定されていたが、当時の日本には金は産出しなかった。大仏本体の鋳造が完了するメドがたった749年、現在の宮城県涌谷で砂金が発見され、メッキに供された。それ以降、金の採掘が日本の各地で始まった。 |
3 | 04/23 | 日本列島と温泉:温泉文化と温泉の恵み | 日本は世界でも屈指の「温泉大国」である。源泉総数は27,405ヶ所、そのうちの42℃以上の高温泉が47%を占めており、宿泊施設のある温泉地は3,133ヵ所とされる。温泉地帯は火山帯より沿うように分布し、ここから熱が供給されている。日本では古くから、温泉は日本人にとって「心のふるさと」とも言える不可欠な文化で、湯浴は単に「体を清浄する」ばかりでなく、「心の汚れまでを洗い清める」と考えられてきた。通常、温泉の種類は組成より10種類に分類されるが、各々のタイプの温泉がどのように形成されるのか、どのような効能があるのかについて理解を深める。いくつかの温泉は周辺の環境にも大きな影響を与えてきた。 |
4 | 05/07 | 日本列島と地熱:温泉と根本的に異なる地熱の恵み | 地熱地帯も火山帯に寄り添うように分布している。地熱発電では、地下1,000〜3,000mの深さから、温泉とは異なる200〜300℃の高温の水蒸気や熱水を取り出して発電する。この熱い源水は、高圧下なので200℃を超えても沸騰しない流体である。実は、日本は世界第3位(2,347万kW相当)の地熱資源大国であるにもかかわらず、地熱発電は日本の電力需要のわずか約0.2%に留まっている。地熱発電では自然が生み出す蒸気を使用して発電するので、風力、太陽光発電などと同様、CO2の排出量は火力発電より大幅に少なくなる。「カーボンニュートラル2050」を達成するためにも将来の飛躍が望まれる。 |
5 | 05/14 | 日本列島南端のサンゴ礁:人気のサンゴ礁と将来の危機 | 人気の観光地である沖縄の魅力は、サンゴ礁にあるといっても過言ではない。沖縄の海には、世界の海に生息するサンゴの半数以上が生息していて、一つの場所で見られるという点では、世界最多の種類数を誇っている。この沖縄のサンゴを育んでいるのが琉球列島のそばに流れている黒潮で、サンゴが好む暖かい海水を南方より運んでいる。しかし近年、沖縄のサンゴ礁に深刻な危機が迫っている:①地球温暖化に伴う高温海水によるサンゴの白化、②オニヒトデによる食害、③農地改良に伴う赤土のサンゴ礁への流入、④陸の河川を通じての汚染・毒物の流入、⑤病気、⑥海洋酸性化。サンゴ礁を健康に保つために人間活動の改善が求められる。 |
6 | 05/21 | 日本列島と海流そしてアジアモンスーン:冬の豪雪地帯と水稲栽培 | 水稲栽培は、杭州市や上海市近くの河姆渡遺跡で7600年前に始まり、日本には紀元前10世紀に伝わった。最も古い遺跡は佐賀県唐津市にある菜畑遺跡である。日本の水稲の故郷は、現代のコメでも弥生時代の古代米でもDNA分析より、朝鮮半島でなく中国起源であるとされる。東北地方の日本海側は、一般的に全国のコメの収量の中のトップクラスとなっている。その理由は、寒暖差の大きい気候で、これには冬の寒さも含まれる。冬季のアジアモンスーンと対馬暖流は、冬の豪雪をもたらし、これは大量の雪解け水となり、水稲栽培を後押しする。地下水はミネラルにも富み、肥沃な大地をもたらす。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は5月28日(水)を予定しています。
◆講義は文理融合の観点より、出来事の基礎的な背景についても解説します。
◆現代の諸問題について解決する方向に関しても考えましょう。
講師紹介
- 川幡 穂高
- 早稲田大学客員教授、東京大学名誉教授
- 横浜市生まれ。博士(理学、東京大学)。専門分野は、生物地球環境学、古環境学・古気候学。日本地球化学会および日本地球惑星科学連合元会長。早稲田大学や東京大学等で、地球惑星科学などの授業を担当。専門は、生物地球化学をベースとした現代と過去の物質循環研究。現代の炭素循環に関する知見を過去に応用して古気候・古環境学の解析を行う一方、これらを統合して過去から未来への環境変遷の解析を行う。古気候学、人類学、考古学、歴史学を駆使した「気候変動と日本人20万年史」(岩波書店)がある。