ジャンル 日本の歴史と文化
オンデマンド
【オンデマンド】倭国の起源―九州王権の前史・形成・展開
水林 彪(早稲田大学・東京都立大学名誉教授)
コード | 910201 |
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定員 | 20名 |
単位数 | − |
会員価格 | 受講料 ¥ 11,880 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 11,880 |
目標
・列島における国家形成について、〈縄文人と弥生人〉と〈古代中国帝国主義〉という観点を常に意識しつつ、考える。
・最近の自然人類学(DNA人類学)の成果を歴史学に生かす。
・長い伝統を有する国家に関する社会科学理論研究の成果を歴史学に生かす。
講義概要
初回は、最近のDNA人類学の目覚ましい発展に学びつつ、東アジア人類集団の形成についてお話しする。第2回は、農耕社会の形成史論、および、これをふまえた共同体国家・首長制国家の形成史論、第3回は、漢武帝によって開始された漢帝国の東夷支配について論ずる前提として、漢帝国の形成と構造について講義する。第4回は前漢による九州王権の創出と列島支配、第5回は後漢による九州王権の強化と列島支配の具体像を描く。第6回は、後2世紀後半期における漢帝国の衰退と、これに連動して生じた九州王権(伊都倭国)の崩壊を主題とする。なお、講義の順序、時間配分などについて、多少の変更がありうることをあらかじめお断りしておく。
各回の講義予定
回 | 講座内容 | |
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1 | 東アジア人類集団の形成 | 60万年頃前にアフリカに誕生し、6万年前頃にその一部がアフリカを出て中近東に達した現世人類(ホモ・サピエンス)は、4万年頃前には東アジアにまで進出した。人類集団としての縄文人は東アジアの最も古い層に位置する人々であった。その後、東アジアには、黄河人、アムール人が形成され(約2万年前頃まで)、以上の人類集団の混血の中から、遼河人(前60世紀頃)、弥生人(前50世紀頃)が誕生してくる。列島古代史を担う人類集団はここに出揃うことになった。 |
2 | 東アジアにおける農耕社会と国家の形成 | 前60世紀頃に西遼河地域に雑穀畑作農耕が成立し、前40世紀 頃までに韓半島南部にまで広まった(第1次畑作農耕伝播)。前30世 紀から前20世紀頃にかけて西遼河地域に成立したより発達した雑穀畑作農耕文化は、前15世紀頃までには、韓半島にまで伝播した。その際、山東半島から遼東半島に伝えられた陸稲農耕もまた、韓半島に伝えられることとなった。そして、これらの畑作農耕文化が、前9世紀頃に列島に波及した(第2次畑作農耕伝播)。前14世紀頃に韓半島に成立した灌漑水稲農耕は前9世紀頃に盛んとなり、前9世紀末ないし前8世紀初頭頃には九州に伝えられる。その後、長い時間をかけて、列島 西部は灌漑水稲農耕社会となる。以上の農耕社会形成を基礎として、東アジアに各地には〈共同体国家〉そして〈首長制国家〉が形成される。この過程で、列島西部は、縄文人社会から弥生人社会へと変貌をとげていく。 |
3 | 中国大陸における帝国の形成と構造 | 前9世紀以降に韓半島および列島において形成される共同体国家および首長制国家は、漢武帝による楽浪郡などの漢四郡の設置(前108年)以降、しだいに漢帝国の支配を受けるようになるが、その歴史過程について講義する前提として、漢帝国の形成と構造、とくにその構造的特質とは何かを考える。 |
4 | 九州王権(伊都倭国)の成立と展開(その1):前漢の列島支配 | 前206年に成立した漢王朝は、武帝の時代に漢四郡を設置し (前108~前107年)、東夷支配を本格化させ、その一環として、韓半島と日本列島に対する帝国主義的支配を開始した。この支配政策の帰結として、九州王権(伊都倭国)が形成された。その後、宣帝(前1 世紀第2四半期)、王莽(前漢大司馬、紀元直後)は、帝国の列島支配を強化し、九州王権(伊都倭国)は支配の触手を本州にのばしていった。 |
5 | 九州王権(伊都倭国)の成立と展開(その2):後漢の列島支配 | 光武帝(後漢初代、後1世紀中葉)、安帝(後2世紀初頭)の各時代に、九州北部の伊都国を拠点とする〈漢=伊都倭国政権〉の列島西部への支配が本格的に展開する。これによって、列島西部弥生人社会は、支配者(伊都倭国)と被支配者(列島西部各地の共同体国家・首長制国家)との分裂・抗争の 時代に入った。この過程と併行して、列島西部弥生人は列島東部縄文人社会へと進出していく。しかしその東限は関東ないし南東北であった。北東北には縄文人社会(続縄文文化)が健在であった。 |
6 | 九州王権(伊都倭国)の崩壊 | 後2世紀後半、後漢は極端に衰退し、これに連動して伊都倭国も衰微し、列島は、『後漢書』倭伝が「倭国大乱」、『魏志』倭人伝が「倭国乱」と記す時代に入った。「倭国大乱」という表現から、古代史学・考古学は大戦乱の状況を想定してきた。しかし、真実はさにあらず、むしろ、漢帝国の支配がなくなり、列島各地は息を吹き返して、それぞれに独自の文化を形成した時代であった。この時期に、次の時代の主役となる出雲や吉備の勢力が台頭してくる。北東北の縄文人社会も揺るがない。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆視聴期間は一般申込開始(2025/3/4)から学期終了翌月末(2025/7/31)までになります。一般申込開始(2025/3/4)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2024年度 秋期 「【対面+オンラインのハイブリッド】倭国の起源―九州王権の前史・形成・展開」 (10/02〜12/04 水曜日、全6回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。
講師紹介
- 水林 彪
- 早稲田大学・東京都立大学名誉教授
- 山形県生まれ。博士(法学、一橋大学)。専門は日本法制史、比較法社会史。東京都立大学、一橋大学、早稲田大学などで、日本法制史、比較法社会史を担当してきた。主要著作は、『封建制の再編と日本的社会の確立』(山川出版社)、『記紀神話と王権の祭り』(岩波書店)、『天皇制史論』(岩波書店)。