ジャンル 人間の探求

早稲田校

最も重要な仏典を読む 幕末・維新期の精神世界

  • 春講座

正木 晃(宗教学者)

曜日 水曜日
時間 13:10~14:40
日程 全10回 ・04月01日 ~ 06月17日
(日程詳細)
04/01, 04/08, 04/15, 04/22, 05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10, 06/17
コード 110513
定員 30名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,700
ビジター価格 受講料 ¥ 34,155

目標

・幕末から明治維新に至る大激動期に生きた人々の精神世界を考察します。
・短い期間に世界観・価値観がいかに大きく変わっていったかを確認します。

講義概要

日本の長い歴史の中でも最大級の変動が起こった幕末から明治維新の時代に生きた人々の精神世界を考察します。特に重要な点は鎖国→尊皇攘夷→開国/佐幕→倒幕→維新という変化に、当時の人々がどのように対処したか、です。結論から言えば、第一級の知識人たちは、想像以上に世界情勢を的確に把握していましたが、尊皇攘夷という大義名分を掲げて実際に行動した人々の知識や情報はかなり偏っていたようです。そしてこの間の、いわばギャップが必要のない軋轢を生み出し、無用な死をあまた生み出してしまったのです。また維新政府の宗教政策がいかに無謀だったかを確認するとともに、新時代の宗教興隆に寄与した人々の事例を指摘します。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/01 浅見絅斎『靖献遺言』 中国の歴史に名を残す「忠臣義士」八人の遺言をとおして、彼らの生き様と死に様を記し、吉田松陰をはじめ、幕末維新期に活動した人々に絶大な影響をあたえた書物。取り上げられている人物は屈原・諸葛亮・文天祥・方孝孺などで、「義」に徹して、権力にあらがい、非業の死を遂げた例が多い。
2 04/08 大塩平八郎『洗心洞箚記』 天保の飢饉の際、幕府は無為無策であり、豪商たちは暴利をむさぼっているという認識から(実際には事実誤認もあると言われる)、飢えに苦しむ民衆を救おうと叛乱を起こし、壮絶な死を遂げた江戸後期の陽明学者、大塩平八郎の著作。当時の日本経済を握る大阪で乱が勃発したことから、幕府の権威を大きく傷つけた。
3 04/15 日米修好条約・戊午の密勅 尊皇攘夷の活動に、文字どおり点火した日米修好条約、および日米修好条約を朝廷の許可なく締結したことに怒った孝明天皇が、尊皇攘夷の権化をみなされていた水戸藩に秘密裏に下した勅書。この密勅からは、当時の朝廷が超保守的で、世界情勢を的確に把握できていなかった事実が浮かび上がる。
4 04/22 会沢正志斎『新論』 幕末の尊皇攘夷活動にとって、文字どおり聖書(バイブル)にあたる最重要の書物。しかしその記述を読むと、単純素朴な攘夷論とはまったく異なり、著者の会沢正志斎が、当時としては驚くほど的確に世界情勢を把握し、きわめて現実的かつ妥当な対外政策を提言していたことがわかる。
5 05/13 会沢正志斎『時務作』 世界情勢を的確に把握していた会沢正志斎はその最晩年、攘夷を否定して開国の必然性を記した。この認識は、尊皇攘夷の権化と信じられていた徳川斉昭も共有していたことがわかっている。しかし尊皇攘夷の活動家たちは偏った認識から暴発し、悲惨な事態を招いたが、皮肉なことにその暴発が幕府の打倒と新政府の樹立につながった。
6 05/20 藤田東湖『弘道館記述義』 水戸藩の学館として設立された弘道館の建学精神を明示する。いわゆる「水戸学」における政教理念を、明倫正名(人としての行動規範/名と実の一致=君主は君主らしく臣下は臣下らしく)・尊皇攘夷・敬神崇儒(神道と儒教の一致)などから論じる。
7 05/27 吉田松陰『留魂録』 安政の大獄で死刑判決を受けて収監された吉田松陰が、処刑の前々日と前日に書き残した、いわば遺書。特に死を論じる箇所は、死に直面した人でなければ書けないとされ、松陰から啓発された弟子たちに絶大な影響をあたえた。
8 06/03 修験道廃止令・明治五年布告 明治維新政府は発足すると同時に、新たな宗教政策を次々に布告した。それらはおおむね仏教信仰の抑圧であり、とりわけ仏菩薩と神々を融合する従来の信仰形態を否定する神仏分離を強行した。その中で最も過酷な弾圧に遭遇したのが、日本固有の信仰とも言える修験道であり、なんと廃止令が布告された。
9 06/10 釈宗演『西遊日記』 過酷な仏教弾圧にあらがい、伝統仏教の再興に尽力した人物の代表例が、臨済宗円覚寺の釈宗演であった。彼は慶應大学で禅僧としては最初に横文字を習得し、明治二〇年から三年間にわたりスリランカに留学して、テーラワーダ仏教を修学した。ただしテーラワーダ仏教に失望し、日本の伝統的な禅の世界に回帰することになる。
10 06/17 釈宗演『楞伽窟示衆』 釈宗演は明治維新から昭和時代に至る間にあらわれた仏教僧のうち、社会に対する影響という点では最大と言っていい人物である。禅僧の多くは自身の悟り体験を詳しく語ろうとしないが、釈宗演は例外的に自身の悟り体験を書き残している。それがこの文章であり、禅宗における悟りを考えるうえで、きわめて重要な意味を秘めている。

講師紹介

正木 晃
宗教学者
1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。

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