ジャンル 文学の心
早稲田校
古今和歌集を読む
中田 幸司(玉川大学教授)
| 曜日 | 土曜日 |
|---|---|
| 時間 | 10:40~12:10 |
| 日程 |
全6回
・07月04日 ~
09月05日 (日程詳細) 07/04, 07/11, 07/25, 08/01, 08/22, 09/05 |
| コード | 120122 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・『古今和歌集』を具体的な和歌の読解を通して読み深めましょう。
・四季や恋のイメージがどのように形づくられてきたのかを考え、古典と現代とのつながりを見つめ直してみましょう。
・和歌を味わいながら、受け継がれてきたことばをどのように引き受けるのか、自分なりに考える楽しさを知りましょう。
講義概要
春は桜、秋は紅葉―私たちはそのように四季を思い描きます。その感覚はいつ、どのように形づくられてきたのでしょうか。『古今和歌集』は、四季や恋、人生の折節を三十一文字に凝縮した、日本最初の勅撰和歌集です。本講座では代表的な和歌を丁寧に読み、ことばの反復や配列、評語の働きに目を向けます。桜や紅葉が象徴となる過程、恋が型として共有されるあり方などを通して、ことばが文化を形づくる力を考えます。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 07/04 | 古今和歌集のはじまり ― 和歌の力をめぐって | 延喜五年、醍醐天皇の勅命によって編纂された『古今和歌集』は、日本最初の勅撰和歌集として知られています。しかし本講では、その成立事情を確認するだけでなく、紀貫之の仮名序に記された和歌観そのものを読み直します。 とりわけ「やまとうたは人の心を種としてよろづの言の葉とぞなれりける」、さらに「力をも入れずして天地を動かし」という一節に焦点を当てます。和歌はなぜ「天地を動かす」とまで語られたのか。そこには単なる文学的誇張ではなく、和歌が担わされた社会的役割や時代的要請が潜んでいるのではないでしょうか。 本講では該当箇所を精読し、ことばの選び方や論理の運びに注意を払いながら、和歌がどのような思想のもとに位置づけられたのかを考察します。人の内なる「心」から生まれるはずの和歌が、どのように公的な場において力を持つものとされたのか。その緊張関係の中に『古今和歌集』の出発点を読み解きます。 |
| 2 | 07/11 | よみ人知らずの和歌 ― 類型と共有される言葉 | 『古今和歌集』には多くの「よみ人知らず」の歌が収められています。作者名のない歌は、単に伝承上の問題として片づけられるものではありません。そこには、個人の名を超えて共有される言葉のあり方が見えてきます。 繰り返される表現、親しみやすい語り口、場に耐える言葉。いわゆる「類型」と呼ばれるものは、型であると同時に、多くの人々の感覚に支えられた表現の基盤でもあります。具体的な和歌を比較しながら、同じように見えることばの中に潜む差異や、匿名であることによって生まれる広がりを丁寧に読み解きます。 また、名を前面に出さない言葉のあり方は、和歌と歌謡がどこかで接していることも示唆します。個人の作品でありながら、同時に共同体の記憶ともつながる―その地平に立って、「よみ人知らず」の和歌を考えます。 |
| 3 | 07/25 | 六歌仙を読む ― 評が生む方向性 | 『古今和歌集』仮名序に示された六歌仙は、後世の和歌理解に大きな影響を与えました。しかし、その評価は単なる紹介ではありません。「あはれなるやうにて」「心あまりてことばたらず」といった評語は、作品の受け取り方に一定の方向性、いわば〈引力〉を与えます。 本講では、とりわけ在原業平と小野小町の和歌を取り上げ、評語と実際の作品とを照らし合わせながら読み進めます。評は何を強調し、何を見えにくくするのか。評価ということばが生み出す読みの傾きを考えます。 |
| 4 | 08/01 | 季節の和歌 ― 象徴はどのように生まれるのか | 『古今和歌集』の春歌・秋歌には、桜や紅葉といった景物が繰り返し詠まれています。多様な自然の中で、これらの景物はどのようにして季節を代表する位置を占めるようになったのでしょうか。 本講では、春歌・秋歌の具体的な和歌を読みながら、言葉の反復や配列がどのような働きを生んでいるのかに注目します。繰り返し選び取られることばは、読む者にとって次第に自然なものとなり、やがて象徴としての力を帯びていきます。 和歌の側から働きかける力と、それを受け止める側の応答。その往復の中で、季節のイメージは形づくられていくのではないでしょうか。四季歌を通して、言葉が文化をつくる過程を考えます。 |
| 5 | 08/22 | 恋の和歌 ― 恋はどこまで「実体」か | 『古今和歌集』の恋歌は、恋の始まりから別れに至るまでの心の移ろいを描いていると読まれてきました。しかし、それらの歌は本当に個々の出来事をそのまま写し取ったものなのでしょうか。 本講では、代表的な恋歌を取り上げながら、繰り返し用いられる歌ことばや表現の型に注目します。具体的な経験としての恋が詠まれていたとしても、和歌集に採られ、配列される過程で、それはある一定の形式や言葉の枠の中に収められていきます。 恋は実体であると同時に、言葉によって形づくられるものでもあります。『古今和歌集』の恋歌を通して、心とことばの関係を考えます。 |
| 6 | 09/05 | 雑の和歌 ― 人生はどのように言葉になるのか | 『古今和歌集』の中心が四季歌と恋歌であることはよく知られています。しかし、それだけでは収まりきらないものが、雑歌として置かれています。老い、別れ、世の無常。人生の折節にふと立ち上がる心の動きは、四季や恋の枠には収まりません。 本講では、雑歌の代表的な和歌を読みながら、人生の感覚がどのような歌ことばによって凝縮されているのかを考えます。個々の経験が詠まれているようでありながら、和歌集に採られることで、それは多くの人が引き受けうることばとして整えられていきます。 四季の象徴、恋の型、歌人評の方向性―これまでの回で見てきた問題を踏まえつつ、最後に雑歌が担う意味を見つめ直します。『古今和歌集』が残したのは、季節や恋の美だけではなく、人の世そのものを受け止める言葉でもあったのではないでしょうか。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆『古今和歌集』(ちくま学芸文庫)他、全歌の載る文庫本をお手持ちの方は各自ご用意ください。資料はご用意いたします。
テキスト
テキスト
小町谷照彦『古今和歌集』(ちくま学芸文庫)(ISBN:978-4480092755)他、全歌の載る文庫本をお手持ちの方は各自ご用意ください。
講師紹介
- 中田 幸司
- 玉川大学教授
- 博士(文学)。ラジオパーソナリティー・早稲田大学非常勤講師等を経て現職。2013年、日本歌謡学会第30回志田延義賞受賞。著書に『平安宮廷文学と歌謡』(笠間書院)、『『古今和歌集巻二十』―注釈と論考―』(共著、新典社)、『学びを深めるヒントシリーズ伊勢物語』・『学びを深めるヒントシリーズ枕草子』(共著、明治書院)、「宇治と和歌―憂鬱な風土の想像から創造へ―」(日本文学風土学会編『「宇治」豊饒の文学風土―成立と展開に迫る決定七稿―』、新典社)他。国会議員政策担当秘書資格をもつ。




