ジャンル 文学の心
早稲田校
漱石文学の世界
中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
長島 裕子(秀明大学客員教授)
安藤 文人(早稲田大学元教授)
藤尾 健剛(大東文化大学教授)
石原 千秋(早稲田大学名誉教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
松下 浩幸(明治大学教授)
服部 徹也(東洋大学准教授)
| 曜日 | 土曜日 |
|---|---|
| 時間 | 10:40~12:10 |
| 日程 |
全8回
・09月26日 ~
11月21日 (日程詳細) 09/26, 10/03, 10/10, 10/17, 10/24, 10/31, 11/14, 11/21 |
| コード | 130104 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・漱石の魅力をさまざまな角度から明らかにしていきます。
・漱石と関連する文学者にも幅広く眼を注ぎ、漱石を立体的に考えます。
講義概要
春学期は大正4年の『道草』までの時期を多角的に分析してきましたが、秋学期はいよいよ大正5年、最晩年の漱石に眼を注いでいきます。作品を読み込む一方で、その時期の諸問題にも眼を向けることにより、漱石が行き着いた地点まで辿っていきたいと思います。『明暗』分析については3回を配当し、複眼的に分析します。いつものメンバー、石原千秋、安藤文人、藤尾健剛、藤井淑禎、松下浩幸、服部徹也、長島裕子、中島国彦の8名で、担当していきます。(企画・中島国彦 早稲田大学名誉教授)
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 09/26 | 漱石最晩年における書画の世界 | 『明暗』の執筆中、漱石は午前中の執筆をすませた後は、漢詩を作り書画を描いて楽しんでいたと言われます。そうした試みは、どのように漱石の執筆意識と関係するのでしょうか。晩年親しんだ良寛や明月上人の書のどこに、漱石は惹かれたのでしょうか。いくつかの事例を紹介しながら、この問題に照明を当てていきたいと思います。(中島国彦) |
| 2 | 10/03 | 「点頭録」を読む | 「点頭録」 は、最初の章を除けば、第一次世界大戦論である。第一次世界大戦に関する最近の研究などを参照しながら、漱石の第一次世界大戦理解がどのように評価できるかを考えたい。また、作品の後半で大きな扱いを受けている「トライチケ」についても、できれば触れてみたい。(藤尾健剛) |
| 3 | 10/10 | 大正4、5年の漱石の手紙を読む | 『道草』連載を終えてから『明暗』連載中に亡くなるまでの漱石を、手紙から考えていきたいと思います。その頃の漱石がどのような人々と手紙のやり取りとしていたのか、どのようなことに思いを寄せていたのかを見ていきたいと思います。新たに知り合った若い人たちとの交流が、漱石にどのようなものをもたらしたのか、どのようなことを記していたのかを、和辻哲郎や若き禅僧たち富澤敬道、鬼村元成への手紙、また芥川龍之介、久米正雄との手紙のやり取りから考えていきたいと思います。(長島裕子) |
| 4 | 10/17 | 「則天去私」と二つの英国小説 | 松岡譲の回想によれば、漱石は「則天去私」につながる作品を問われて、「ヴイカー・オヴ・ウェークフィールド 」(オリヴァー・ゴールドスミス『ウェークフィールドの牧師』1766年刊)や「 プライド・アンド・プレジュデイース」(ジェイン・オースティン『自負と偏見』1813年刊)の名を挙げたという。ともに英国の小説であるが、今回はこれらの作品を紹介し、そこに通底するものを捉えることで、いわば「帰納的」に漱石最晩年の小説観、あるいは文学観を探っていきたい。また、それが執筆中の『明暗』に反映されているか否か、という点にも触れる予定。(安藤文人) |
| 5 | 10/24 | 新たなヒロイン「お延」の意義とは何か | 漱石の初期の作品では、女は男の人生を狂わせる「運命の女」として描かれるものが多いが、晩年に至る漱石の創作活動は、そのような悪女的な女性像を解体する過程でもあった。『明暗』のお延は、その試行錯誤の末にたどり着いたひとつの成果だと言える。器量が良くないといわれるお延は、およそ悪女的な女性像からは外れている。だが、お延の特異さは〈愛情〉を希求するその過剰さにある。そして、このお延の過剰さこそが、まさに『明暗』を近代小説たらしめているといえるだろう。「結婚」してもなお「恋愛」を続けなければならない近代の夫婦とは何か。「お延」という漱石文学における新たなヒロインを追いつつ、その意義を考察したい。(松下浩幸) |
| 6 | 10/31 | 知識人を降りること | 『明暗』の津田由雄は、漱石文学の他の男性主人公のように東京帝国大学を出た知識人です。少なくとも周囲の人々からはそう見られているはずです。しかし、作品の後半で小林に絡まれ始めるあたりから、かなり怪しくなっていきます。彼は周囲の人々から知識人のポジションから引きずり下ろされるのでしょうか。いえ、そうではなさそうです。姿があまり見えない「語り手」が、津田の無意識を見えるようにしているのではないでしょうか。そのように「行動する語り手」の仕事ぶりを見てゆきます。(石原千秋) |
| 7 | 11/14 | 小説技法史から見た『明暗』 | 以前の講座で、映画の技法が『明暗』に取り込まれていることを紹介したことがある。その時は、映画=通俗芸術という観点から『明暗』の通俗性について述べたが、『明暗』でもう一つ気になるのが、その頃流入した小説技法との関係である。一九世紀末から二〇世紀初めにかけて米国で流行した小説論、小説技法論の代表的なものはハミルトンの『小説の材料と方法』だが、一九〇八年五月に米国で出版されたこの本の主要部分が、何と翌年一二月には、「小説論」というタイトルで中村星湖によって紹介されているのである(『文藝百科全書』早稲田文学社)。しかし、自然主義や白樺派へと向かう潮流の中では技巧的、技法的なものが重視されることはなく、再びこのテーマに光があてられるようになったのは、木村毅『小説研究十六講』(二五年)→松本清張の登場以降のことなのである。そこで漱石が(ひいては『明暗』が)顧みられなくてはならないというわけだ。<無技巧>の自然主義や白樺派と対峙した漱石がどう小説技法と関わりを持ったか、それを『明暗』を例にして考えてみたい。(藤井淑禎) |
| 8 | 11/21 | 「則天去私」の相続――漱石の弟子達 | 漱石の遺作『明暗』およびそれにまつわる「則天去私」を語る弟子達の言葉には、どこか持って回った表現がつきまとう。最晩年の漱石から距離を置き始めていた年長世代と、「則天去私」の説を度々聞きながらも自らの原稿のために生前最後の木曜会を中座したという若い世代との対比に注目して、弟子達の回想文のほか、漱石の臨終、夏目筆子との結婚をめぐる人間模様を描いた久米正雄「破船」、松岡譲「憂鬱な愛人」も分析対象におさめ、漱石没後の弟子達の漱石をめぐる語りを読み解いてみたい。(服部徹也) |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講は11月28日(土)を予定しています。
◆各回担当講師・担当回・各回講義内容は変更となる場合がございます。
講師紹介
- 中島 国彦
- 早稲田大学名誉教授
- 1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館前理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。
- 長島 裕子
- 秀明大学客員教授
- 早稲田大学大学院修士課程修了。現在、秀明大学客員教授。専門分野は日本近代文学。著書に、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『文章の達人 家族への手紙4 夫より妻へ』(編著、ゆまに書房)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)がある。
- 安藤 文人
- 早稲田大学元教授
- 岐阜県生まれ。早稲田大学第一文学部、同大学院において英文学を専攻した後、比較文学に転じ、英国18世紀作家ロレンス・スターンが漱石の初期作品に与えた影響について研究を続けている。文学学術院において英語科目を担当。英語関係の著作に『アウトプットに必要な英文法』(研究社)他がある。
- 藤尾 健剛
- 大東文化大学教授
- 1959年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科修士課程修了。香川大学助教授をへて、現職。著書に、『夏目漱石の近代日本』(勉誠出版)、『川端康成 無常と美』(翰林書房)がある。
- 石原 千秋
- 早稲田大学名誉教授
- 1955年、東京都生まれ。成城大学文芸学部卒業、同大学院博士後期課程中退(文学修士)。東横学園女子短期大学助教授、成城大学教授を経て、現職。著書『漱石と三人の読者』(講談社現代新書)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『漱石入門』(河出文庫)、 『漱石はどう読まれてきたか』(新潮選書)など。
- 藤井 淑禎
- 立教大学名誉教授
- 愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
- 松下 浩幸
- 明治大学教授
- 専門分野は日本近現代文学。著書に『夏目漱石―Xなる人生』(NHK出版)、共著に『夏目漱石事典』(勉誠出版)、『異文化体験としての大都市―ロンドンそして東京』(風間書房)、『日本近代文学と〈家族〉の風景―戦後編』(明治大学リバティアカデミー)など。
- 服部 徹也
- 東洋大学准教授
- 1986年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。同大学院文学研究科助教(非常勤)、大妻女子大学非常勤講師、大谷大学助教等を経て、現職。専門は日本近代文学・文学理論。共著に小平麻衣子編『文芸雑誌「若草」:私たちは文芸を愛好している』(翰林書房)など。





