ジャンル 文学の心
早稲田校
名作への招待、近現代文学150年
中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
宮内 淳子(近代文学研究者)
小堀 洋平(和洋女子大学准教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
小菅 健一(山梨英和大学元教授)
山本 亮介(東洋大学教授)
石割 透(駒澤大学名誉教授)
篠崎 美生子(明治学院大学教授)
| 曜日 | 月曜日 |
|---|---|
| 時間 | 15:05~16:35 |
| 日程 |
全8回
・09月28日 ~
11月30日 (日程詳細) 09/28, 10/05, 10/19, 10/26, 11/02, 11/09, 11/16, 11/30 |
| コード | 130108 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・日本近代現代文学の名作・問題作に照明を当てていきます。
・よく知られた名作はもちろん、あまり注目されていない優れた作品を、積極的に紹介していきます。
・明治から現代まで、幅広く名作・問題作を扱っていきます。
講義概要
一昨年の春学期からリニューアルしたこのオムニバス講座は、講師がぜひ皆さんに読んでいただきたい作品、新たにその面白さが発見された作品を、重点的に紹介していきます。宮内淳子(宇野千代)、小堀洋平(島崎藤村)、山本亮介(坂口安吾)、藤井淑禎(舟橋聖一)、石割透(宮本輝)、篠崎美生子(林京子)、小菅健一(梶井基次郎)、中島国彦(三好達治)の8名が、明治の名作から戦後文学まで、さまざまな時代の個性豊かな作品を浮き彫りにしていきます。できるだけ、文庫本などで比較的簡単に入手できる作品を選んでみました。150年間の文学の世界の万華鏡を、お楽しみください。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 09/28 | 三好達治の詩に親しむ | 「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。/次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」ーー三好達治の「雪」(詩集『測量船』)という詩は、たった2行ですが、誰でも知っている名作です。しかし、昭和を代表する詩人の歩みは、簡単ではありませんでした。生涯の代表作、「乳母車」(詩集『測量船』)、「大阿蘇」(詩集『霾』)、「艸千里濱」(詩集『艸千里』)、「冬の日」(詩集『一點鐘』)などの成立過程を探りながら、達治詩の魅力を考えたいと思います。三好達治の代表作は、『三好達治詩集』(新潮文庫、岩波文庫)で読むことができます。(中島国彦) |
| 2 | 10/05 | 宇野千代「おはん」 語りの魅力 | 宇野千代の代表作「おはん」は、1947年12月号『文体』から始まって断続的に掲載され、完結したのは1957年5月号『中央公論』であった。中篇にもかかわらず10年もかけて、精魂を込めて書き上げた本作は、宇野千代の文学の真髄を示す名作として高く評価された。しかし、現代の読者は、語り手の男の気弱さを盾にした身勝手さや、元妻のおはんのあまりに無抵抗な大人しさに、もどかしく、割り切れない思いをするだろう。近代文学は個の確立といった価値観のもとに書き継がれてきたが、それに反するようなこの作品の魅力はどこにあるのだろうか。今回は本作の語りに注目して読んでみたい。「おはん」は、新潮文庫、中公文庫に収録。(宮内淳子) |
| 3 | 10/19 | 島崎藤村『春』を読む | 島崎藤村の長編小説『春』(1908)は、作者と北村透谷を中心とする雑誌『文学界』(1893〜1898)の人々をモデルとして、当時の文学青年の群像を描いた作品として知られています。講座では、こうした背景を確認したうえで、本文中に散りばめられた様々なモチーフ(人事のみならず植物・動物など天然の事物も含む)に注目し、前作『破戒』(1906)との関係も視野に入れつつ、作品の新しい読みを試みます。なお、本作は岩波文庫、新潮文庫などで読むことができます。(小堀洋平) |
| 4 | 10/26 | 中間小説の時代―ー舟橋聖一・夏子もの | タイトルは「中間小説の時代」だが、中心は「舟橋聖一・夏子もの」である。もっとも、私が勝手にそう決め付けているわけではない。私が敬愛してやまない文芸評論家の十返肇が「偽らぬ中間小説」(『わが文壇散歩』1956年)という評論の中で、夏子ものを中心として中間小説を論じているのだ。で、その夏子ものだが、52年から62年にかけて雑誌連載をもとにして10冊の単行本が出された。中身は、十返の説明を借りれば「オメカケの生活が現実的に展開」されたもので、書き継がれた10年間の世相が彼女の眼を通して描かれている。ただ、十返が中間小説を評価するのは、そこには人生とか生活、現実が活写されていて、「なにげない生活の断片を描いて小市民の日常生活をみせたり、人生変転の流れを示して人間の侘しい姿を描い」たりしているからなのである。1回話し切りの講座なのでどのくらいご紹介できるかわからないが、昭和30年代を背景とする、中間小説の流行と舟橋聖一・夏子ものについてお話する。(夏子ものはかつてはどこの図書館にもありましたが、いまは寥寥たるものです。もちろん、文庫などもありません。そういう作家作品の発掘紹介が大切であると考えていますのでご容赦下さい)(藤井淑禎) |
| 5 | 11/02 | 孤高の表現者梶井基次郎の感性と自意識 | 近代文学史において、夭折した作家の系譜を眺めてみると、もっと長生きをしたなら、どれだけ凄い魅力的な作品を書いただろうと思える小説家は数多くいます。しかし、◯◯主義や▢▢派といった既存のジャンルの枠に収まることなく、唯一無二の孤高の表現者として、五感の表現を縦横無尽に駆使して、その研ぎ澄まされた感性の煌めきを思う存分に発揮した梶井基次郎(1901〜1932) ほど長生きして欲しかった作家はいません。無い物ねだりと十分承知していますが、年月をじっくりかけて成熟した完成度の高い作品をもっと読みたかったです。講座では、梶井基次郎の代表作「檸檬」「Kの昇天」、そして、自意識(近代的自我)の問題が描かれた「路上」を中心に、その魅力を読み解いていきます。(梶井基次郎の作品は各社から文庫本が出ていますので、教材が収録されているものでしたらどれでも結構です。当日のレジメは新潮文庫から引用します。)(小菅健一) |
| 6 | 11/09 | 坂口安吾の長篇小説『吹雪物語』をどう読むか | 昭和戦前から戦後にかけて活躍した無頼派の作家坂口安吾が、今年生誕120年を迎えます。その数々の魅力的な作品は、いまもなお新たな読者を獲得しています。今回取り上げる『吹雪物語』(1938年)は、安吾が苦心の末に完成させた初の長篇小説になります。当時の文学シーンにあって理想の小説を追求した野心的大作ですが、内容・表現ともに問題点が多く、一般的な意味で評価されるものとなっていません。一方、熱を帯びつつ延々と続く叙述が、独特の存在感を放っていることも確かです。問題作『吹雪物語』をどう読むか、安吾の狙いとその困難を視野に入れて考察します。講談社文芸文庫『吹雪物語』・ちくま文庫『坂口安吾全集2』収録(いずれも品切れ中)。(山本亮介) |
| 7 | 11/16 | 宮本輝「錦繍」 | 宮本氏の初期の作品には「泥の河」などの河三部作が知られていますが、「錦繍」はそれに次ぐ時期の宮本氏の作品で、離婚した夫婦の男女の間に交わされる往復書簡を通して、阪神間、日本海沿いの舞鶴、それに大阪に住む三人の、タイプの異なるそれぞれに魅力的な女性の描き分けが見事。また、彼女たちと関り、生きた男性を通して、男女間の関係の機微、情念を見事に炙り出し、人生の深淵を垣間見せてくれる作品です。書簡や彼女たちと関わる土地、場所についても触れたく思います。新潮文庫に収録されています。(石割透) |
| 8 | 11/30 | 林京子「祭りの場」―ー帰宅まで/書くまでの時間 | 「祭りの場」(1975)は、1945年8月9日、長崎市北部に投下された原子爆弾の火から逃れる女学生「私」をめぐる物語です。「私」は小説の語り手でもありますので、小説の中には、原爆の火から逃れようとする「私」と、逃れたはずの原爆とともに生き続け30年後にそれを書き留めようとする「私」が登場することになります。講座では、「私」が逃げた8月9日の道を長崎の地図や風景とともにたどるとともに、「私」のその後の30年を、小説の言葉の向こうに透かしてみたいと思います。作品は講談社文芸文庫に収録されています。(篠崎美生子) |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆各回担当講師・担当回・各回講義内容は変更となる場合があります。
◆休講が発生した場合の補講は12月7日(月)に行います。
講師紹介
- 中島 国彦
- 早稲田大学名誉教授
- 1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館前理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。
- 宮内 淳子
- 近代文学研究者
- 東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。専門分野は日本近代文学。近代文学研究者。帝塚山学院大学教授、立正大学で非常勤講師を勤めた。著書に『谷崎潤一郎 異郷往還』(国書刊行会)、『岡本かの子論』『藤枝静男』(EDI)、共著に『上海の日本人社会とメディア』(岩波書店)など。
- 小堀 洋平
- 和洋女子大学准教授
- 1986年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。日本近代文学専攻。和洋女子大学等で近代文学を教える。単著に『田山花袋 作品の形成』(翰林書房)、共著に『文豪たちの住宅事情』『文豪東京文学案内』(笠間書院)がある。
- 藤井 淑禎
- 立教大学名誉教授
- 愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
- 小菅 健一
- 山梨英和大学元教授
- 文学修士(早稲田大学)。専門分野は、日本近現代文学および表現論。山梨英和大学において日本近現代文学、現代文化論、現代芸術論、日本語スキル(初年次教育)や公開講座の日本近現代文学の作品講読を担当。共著書に『日本文芸の系譜』『日本文芸の表現史』他、近著に『未来の学び 小学生のための生涯学習講座』。
- 山本 亮介
- 東洋大学教授
- 1974年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門分野は、日本近現代文学。信州大学を経て現職に至る。著書に、『横光利一と小説の論理』(笠間書院)、『小説は環流する―漱石と鷗外、フィクションと音楽』(水声社)などがある。
- 石割 透
- 駒澤大学名誉教授
- 1945年京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得修了。専門分野は日本近代文学。『芥川龍之介全集』、『芥川龍之介資料集』共同編集の他、著書『芥川龍之介初期作品の展開』(有精堂)、編著書『芥川竜之介書簡集』『芥川竜之介随筆集』(岩波文庫)『ジャズ』(ゆまに書房)などがある。
- 篠崎 美生子
- 明治学院大学教授
- 日本近現代文学専攻。博士(文学、早稲田大学)。芥川龍之介の小説から研究を始め、その後、日本近代文学とナショナリズムの関係に関心を持つ。近年は、日本近代文学と中国との関わり、原爆と文学の関わりについて研究中。単著に『弱い「内面」の陥穽』(翰林書房)がある。





