ジャンル 世界を知る
早稲田校
近世ヨーロッパの歴史 大航海時代と宗教改革及び対抗宗教改革の時代のヨーロッパ、日本、そしてグローバル・ヒストリー
蝶野 立彦(早稲田大学非常勤講師、国際日本文化研究センター客員教員)
| 曜日 | 火曜日 |
|---|---|
| 時間 | 13:10~14:40 |
| 日程 |
全10回
・09月29日 ~
12月08日 (日程詳細) 09/29, 10/06, 10/13, 10/20, 10/27, 11/10, 11/17, 11/24, 12/01, 12/08 |
| コード | 130308 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 2 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 29,700 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 34,155 |
目標
・大航海時代の到来と宗教改革によって幕を開ける近世の前半期(16〜17世紀)のヨーロッパの歴史を「グローバル・ヒストリー」の視点を交えながら概観した上で、同時代の「ヨーロッパと日本との関わり」について考察を行い、この時代のヨーロッパでどのような「日本観」が形作られていったかを「ヨーロッパ史の展開」との関連のなかで読み解いてゆきます。
・この時代のヨーロッパ諸国の歴史的歩みについて、非ヨーロッパ世界(アフリカ・アメリカ・アジアなど)との関わりを踏まえながら、政治・外交・宗教・文化・経済・流通など多様な角度から論じるとともに、この時期の「ヨーロッパと日本の関係」をヨーロッパで刊行された文書を手がかりにして跡づけます。
・重要な欧文史料・邦訳史料(未邦訳史料の場合には教員による訳文)・図像史料を紹介しながら、実証的に歴史的事実を明らかにしてゆきます。
講義概要
第1回〜第2回では「①大航海時代のヨーロッパと外部世界との邂逅」をテーマに、近世前半期のヨーロッパ諸国のアフリカ・アメリカ・アジアへの進出の動きがヨーロッパの流通・政治・国際秩序をどのように変えたのかを考察し、第3回〜第4回では「②宗教改革とカトリックの対抗宗教改革」をテーマに、宗教改革と対抗宗教改革がヨーロッパにいかなる変動を引き起こしたのかを分析します。第5回〜第10回では「③大航海時代の日欧関係とヨーロッパにおける日本観の形成」をテーマに、ポルトガル・スペイン商人、オランダ東インド会社、カトリック諸修道会の日本での活動の過程でいかなる日本認識がヨーロッパで形作られたのかを考察します。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 09/29 | 大航海時代の始まり、ポルトガルとスペインによる「世界」の分割と植民地化政策 | ヨーロッパ史のなかの「近世」、15世紀末〜16世紀におけるヨーロッパの国際貿易ルートの変化、中世末期のイベリア半島における「レコンキスタ(国土回復運動)」と「ポルトガル・スペインの世界進出」の連動、ポルトガル王権とコンゴ王権の結びつき、ポルトガル王権による西アフリカ及びインドへの進出と「東回り航路」の開拓、スペイン王権による「西回り航路」の開拓と新大陸(アメリカ大陸)の「発見」、「世界分割」の起点としての教皇勅書、中世後期の「十字軍思想」が「世界分割」に与えた影響、ポルトガルによるアフリカ及びアジアの植民地化政策とキリスト騎士団、ポルトガルによる奴隷貿易とアメリカ大陸における黒人奴隷制の始まり、スペインによるアステカ及びインカの征服と「アメリカ先住民」をめぐる論争、16世紀のカトリック宣教師たちの「インディオ」認識、アメリカ大陸でのスペインの植民地経営とヨーロッパの価格革命及び商業革命、「スペインの衰退」の原因をめぐって |
| 2 | 10/06 | イギリスとオランダの東インド会社による海外進出と植民地経営、「世界の海」をめぐるスペイン・ポルトガルとオランダ・イギリスの覇権争い | イギリス・オランダによる「ポルトガル及びスペインの海外交易ルート」の侵食、オランダ独立戦争とオランダ東インド会社の設立、「スペイン王権によるポルトガルの併合(スペイン・ポルトガル同君連合の成立)」(1580年)がヨーロッパの国際秩序と海洋覇権に及ぼした影響、「スペイン脅威論」の高まりとオランダ独立戦争期のオランダを拠点とする「反スペインのプロパガンダ(情報宣伝)」の展開、フーゴー・グロティウスの『自由海論』と「ポルトガルとスペインによる世界分割」の《国際法上の正当性》をめぐる議論、東南アジア貿易をめぐるオランダ東インド会社とイギリス東インド会社の抗争、アジア貿易における「銀」の重要性と「銀の供給地」としての日本 |
| 3 | 10/13 | ルター、ツヴィングリ、カルヴァンによる宗教改革と「宗教改革の国際的拡大(ドイツ、スイス、フランス、イングランド、スコットランド、オランダ、北欧)」 | 「宗教改革の舞台」としての神聖ローマ帝国、アウグスティヌス会修道士としての若き日のルター、ルターによる「贖宥状」への批判と中世末期のカトリシズム、ルター神学の特徴とその歴史的影響、宗教改革と活版印刷術と大衆プロパガンダ、ドイツ宗教改革の言語文化的背景(「知識人の言語」としてのラテン語と「大衆の言語」としてのドイツ語)、ベストセラー作家としてのルター、「神聖ローマ皇帝とドイツの諸侯の政治的駆け引き」が宗教改革に及ぼした影響、16世紀初頭のスイスの政治状況とチューリヒにおけるツヴィングリの宗教改革の特徴、ジュネーヴにおけるカルヴァンの宗教改革と「プロテスタントの国際的ネットワークの拠点」としてのジュネーヴ、フランスでの宗教改革への弾圧とフランスのプロテスタント信徒(ユグノー)の動向、オランダ宗教改革とオランダ独立戦争、イングランド宗教改革の起源としての「ロラード派」とイングランド国王ヘンリ8世によるイングランド国教会の設立、スコットランドの宗教改革、北欧の宗教改革 |
| 4 | 10/20 | ローマ・カトリックの対抗宗教改革とカトリシズムの変容 | 中世末期〜16世紀初頭における「教皇首位説の明確化」と「教皇権の新たな基礎づけ」、「ルターによる教皇権への批判」とそれに対するローマ教皇庁の応答、「ルネサンス教皇の時代」から「改革教皇の時代」への推移、教皇庁による「都市ローマの改造」と「ローマ」イメージの喧伝、「ローマ教皇」と「神聖ローマ皇帝」の関係、中世の「両剣論」と「教皇権と世俗的支配権との関係」をめぐる近世の議論、神聖ローマ皇帝カール5世による公会議開催要求とその背景としての「公会議主義」、ローマ教皇パウルス3世によるトリエント公会議の開催と「対抗宗教改革の路線」の明確化、トリエント公会議以降のカトリック教会による「禁書目録」と検閲体制、対抗宗教改革の手段としての「聖人崇敬」「聖遺物崇敬」「聖地巡礼」、16世紀後半の対抗宗教改革のなかでの「イエズス会」の役割、15世紀末〜17世紀の非ヨーロッパ世界におけるカトリック修道会の宣教活動と対抗宗教改革との関わり |
| 5 | 10/27 | 中世末期〜近世のグローバル・ヒストリーのなかのヨーロッパと日本、中世末期のヨーロッパの「日本」イメージ、1540年代のポルトガル商人の来日とザビエルの日本渡航前の時代の「新たな日本情報」の出現 | 中世〜大航海時代のヨーロッパの地政学のなかでの「インド」「中国」「日本」の位置づけ、マルコ・ポーロの『東方見聞録』と「ジパング」、ポルトガルとスペインによる「世界分割」の構図のなかで「日本」が占めた特異な位置、1540年代のポルトガル人の日本到来期の国際情勢と日本、ジョルジェ・アルヴァレスの日本情報(1547年)、ニコラオ・ランチロット/アンジローの日本情報(1548年)、「ランチロット/アンジローの日本情報」のイタリア語版・ラテン語版・ドイツ語版の比較から浮かび上がる「日本とヨーロッパの政治体制の類似性に対するヨーロッパ人の関心と誤解」、16〜17世紀のヨーロッパの「日本情報」のなかでの「アンジロー」像と「キリスト教の日本伝来のプロセスのなかでアンジローが果たした役割」についてのヨーロッパ人の認識 |
| 6 | 11/10 | 1540年代末〜1550年代初頭の日本でのザビエルの活動と「ザビエルと日本」をめぐるヨーロッパ人の論述 | ポルトガル王ジョアン3世によるザビエルのインド派遣の背景、ザビエルの日本到来とイエズス会による日本でのカトリック宣教の始まり、オラツィオ・トルセリーニによるラテン語訳『ザビエル書簡集』(1596年)及び『ザビエル伝』(1594年/1596年)がヨーロッパの知識人たちの「日本観」に及ぼした影響、1548年〜1552年のザビエルの書簡に描かれた「日本と日本人」「日本の言語文化」の特徴、ザビエルによる「インドと日本」「中国と日本」の比較、鹿児島・山口・京都・豊後でのザビエルの足跡、ザビエルの京都への旅と「日本の政治体制」についてのヨーロッパ人の認識の変化、ザビエルの書簡を通じてヨーロッパに紹介された「日本の有力支配者たちの群像」(島津貴久、大友宗麟)、鹿児島でのザビエルによる「日本語でのキリスト教布教計画」とそのなかでのアンジローの役割、ラテン語訳ザビエル書簡集にみられる「無学な者(homo idiota)」というアンジローの呼称から垣間見える《ヨーロッパのラテン語文と各国語文》と《日本の漢文と仮名文》のアナロジー、トルセリーニの『ザビエル伝』における「鹿児島でのザビエルによる奇跡」及び「ザビエルの遺骸」についての描写と対抗宗教改革期のカトリックの「聖人崇敬」「聖遺物崇敬」「聖地巡礼」との結びつき |
| 7 | 11/17 | 16世紀後半の日本でのイエズス会士たちの活動と1560年代以降のヨーロッパにおける「イエズス会士の日本情報」の広まり | 1560年代のヨーロッパにおける新たな書籍ジャンルとしての「イエズス会書簡集」「インド書簡集」「日本書簡集」、「インド・日本でのイエズス会の活動」に関するジョヴァンニ・ピエトロ・マッフェイの歴史叙述(『インド諸史』[1588年])とマッフェイによるラテン語訳『イエズス会書簡集』がヨーロッパ人の「日本観」に与えた影響、大航海時代のヨーロッパの「野蛮人論」のなかでの「アメリカ先住民」と「中国人及び日本人」の比較、「日本の言語文化」に対する16世紀後半のイエズス会士たちの関心、ヨーロッパに紹介された「大道寺裁許状」の漢字文、16世紀後半の日本におけるキリスト教宣教師と日本の仏教者との間の「神学論争」の記録、キリスト教の救済史的・終末論的歴史観の下での「世界の創始者」をめぐる論争、ルイス・フロイスの書簡に記された「京都の仏教文化」の特徴、日本人ロレンソの書簡に描かれた「日本の仏教僧のキリスト教改宗の軌跡」、ヨーロッパに書き送られた日本情報に認められた「イエズス会による日本での病院建設」と「日本におけるレプラ患者とカトリック宣教師の結びつき」、イエズス会士たちの書簡を通じてヨーロッパに紹介された「日本の有力支配者たちの群像」(松浦隆信、織田信長) |
| 8 | 11/24 | 1580年代の天正遣欧使節のヨーロッパへの到来と「天正遣欧使節をめぐる日本情報」の流布 | 天正遣欧使節のヨーロッパへの到来と1580年代〜1590年代のヨーロッパにおける「日本関連印刷物の出版ブーム」、ラテン語による『ローマでの天正遣欧使節の教皇謁見式に関する教皇庁の公式の記録』(1585年)、各国語による「天正遣欧使節に関する情報」の刊行・発信と「ラテン語が理解できない非学識層(民衆)」への日本情報の伝達、対抗宗教改革期のカトリックの検閲体制の下で天正遣欧使節に関する教皇庁のラテン語の記録はどのようにして各国語に翻訳されたのか(ルター派による翻訳、地下出版)、「天正遣欧使節のローマへの派遣の目的」は当時のヨーロッパでどのように理解されていたか、天正遣欧使節と「イエズス会による情報宣伝」との関わり、日本のキリシタン大名のローマ教皇宛の書状と中近世ヨーロッパのカトリック世界における「教権と俗権の関係づけ」、カトリックとプロテスタント諸派の神学論争の題材としての「天正遣欧使節」 |
| 9 | 12/01 | 1580年代以降のスペインと日本の接触・交渉の始まり、1610年代の慶長遣欧使節のヨーロッパへの到来と「慶長遣欧使節をめぐる日本情報」 | 1580年代のスペイン領フィリピンからのフランシスコ会士・アウグスティヌス会士の日本渡航、ローマ教皇によるイエズス会への「日本での布教独占権」の付与(1585年)と「日本での布教の権利」をめぐるイエズス会と他の諸修道会の間の対立、適応主義をめぐる論争と典礼問題の発生、ヨーロッパにおける「イエズス会批判」の潮流の形成、1600年代における日本とスペインとの外交交渉、徳川家康の「スペイン王への使節」としてのフランシスコ会士ルイス・ソテロ、「慶長遣欧使節の来欧」の歴史的背景としての「日本でのカトリック司教区の設立」をめぐる動き、「スペインの西回り航路」での慶長遣欧使節のアメリカ大陸及びヨーロッパ訪問、ラテン語による『ローマでの慶長遣欧使節の教皇謁見式に関する教皇庁の公式の記録』(1615年)、各国語による「慶長遣欧使節に関する情報」の刊行・発信、「慶長遣欧使節関連情報」から浮かび上がる同時代のヨーロッパの「日本」認識、ヨーロッパで流布された遣欧使節ソテロと支倉常長の人物像、「洗礼志願者」としての伊達政宗のイメージと伊達政宗のローマ教皇宛の書状の真偽をめぐる問い、ソテロの『教皇ウルバヌス8世宛ての日本の教会の状況に関する報告』(1624年)が三十年戦争期のヨーロッパに呼び覚ました波紋 |
| 10 | 12/08 | 17世紀初頭のオランダ人及びイギリス人の日本への到来、「オランダ東インド会社関係者の日本情報」、ヨーロッパにおける「日本研究」の芽生え | 1600年代〜1610年代の日本でのオランダ及びイギリスの東インド会社の活動の始まり、オランダ東インド会社関係者による「プロテスタントの日本情報」がヨーロッパの日本認識に及ぼした影響、17世紀ヨーロッパの教派対立と1620年代の日本におけるスペイン・ポルトガルとオランダ・イギリスとの間のプロパガンダ合戦、平戸オランダ商館長を務めたフランソワ・カロンの『強大なる日本王国についての記録』(1648年)、1620年代の長崎でのカトリック信徒の拷問・処刑についてのライエル・ハイスベルツの記録がヨーロッパに与えた衝撃、ヨーロッパで著されたはじめての「学術的な日本研究」としてのベルンハルト・ヴァレニウスの『日本王国記』及び『日本人の宗教についての論考』(1649年)、「江戸幕府の統治体制」と「ヨーロッパの絶対王政」の比較、「世界の諸宗教」と「日本の伝統的宗教」の比較、「日本における《キリスト教禁教》と《ポルトガル人・スペイン人の追放》の理由」についてのヴァレニウスの分析、エンゲルベルト・ケンペルの『廻国奇観』(1712年)と『日本誌』(1727年)、「江戸幕府の鎖国体制」についてのケンペルの評価と日本の蘭学者志筑忠雄によるその日本語訳(『鎖国論』[1801年]) |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆本講座は2025年度秋学期の同名講座の内容をもとに、新たな知見を加えて再構成されています。
講師紹介
- 蝶野 立彦
- 早稲田大学非常勤講師、国際日本文化研究センター客員教員
- 早稲田大学第一文学部卒。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程(西洋史専攻)単位取得満期退学。博士(文学)。専門分野は、宗教改革期・近世ドイツ史、ヨーロッパ宗教史、日欧交渉史。著書・論文に、『十六世紀ドイツにおける宗教紛争と言論統制』(彩流社)、『中近世ヨーロッパの宗教と政治』(共著、ミネルヴァ書房)、「ベルンハルト・ヴァレニウスの日本論の学術的意義の再検討――『日本王国記』(1649)と『日本人の宗教についての論考』(1649)の《文脈上の繋がり》に焦点を合わせて」(『明治大学国際日本学研究』18巻1号、2026年、40-62頁)などがある。




