ジャンル 現代社会と科学

早稲田校

日本国憲法制定80周年と現代社会

  • 秋講座

愛敬 浩二(早稲田大学教授)

曜日 水曜日
時間 10:40~12:10
日程 全8回 ・10月07日 ~ 11月25日
(日程詳細)
10/07, 10/14, 10/21, 10/28, 11/04, 11/11, 11/18, 11/25
コード 130711
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・外国憲法との比較を通じて日本国憲法に対する理解を深める
・戦後政治において日本国憲法が果たしてきた役割についての理解を深める
・具体的な憲法裁判の分析を通じて法的思考の初歩を体験する
・現代の政治問題・社会問題について憲法の観点から考える方法を学ぶ

講義概要

近代ヨーロッパにおいて成立した立憲主義という政治原理を「人類普遍の原理」として受け入れたのが日本国憲法です。ただし、理想主義的・普遍主義的な日本国憲法は、外国軍(GHQ)の占領下で制定されたこともあり、制定から80年の間ずっと「全面改正すべき」との批判も浴びてきました。本講座では、日本国憲法と外国憲法との比較や日本国憲法が戦後憲法政治において果たしてきた役割の分析を通じて、日本国憲法の意義と課題について検討します。また、具体的な判決や憲法問題を素材として政治問題・社会問題を憲法の観点から考察する視点を提供します。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 10/07 芸術に対する公金支出と憲法 「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」でも問題となった「美術館の展示内容を理由として市長は補助金を停止できるか」という具体的な政治問題を素材とし、アメリカで起きた同様の事件(ブルックリン美術館事件)との比較を通じて、憲法は何のためにあるのか、憲法的思考とはどのような営みかについて考える。
2 10/14 「家制度」と日本国憲法 妻の浮気のみを処罰する旧刑法183条(姦通罪)が日本国憲法の制定時に廃止されたエピソードの分析を通じて、基本的人権の保障と違憲審査制を導入した日本国憲法が、戦後日本の民主的社会の形成に対して果たした役割について検討する。
3 10/21 表現の自由の優越的地位 基本的人権の中で表現の自由を保障することが最も重要であるという考え方(表現の自由の優越的地位論)の形成過程をアメリカ憲法判例の分析を通じて確認した上で、現在のメディア状況の下で「表現の自由の優越的地位論」の当否について考える視点を提供する。
4 10/28 『チャタレイ夫人の恋人』(D.H.ロレンス)はわいせつ文書か? 『チャタレイ夫人の恋人』の出版は刑法175条(わいせつ物頒布罪)に該当するとして翻訳者(伊藤整)と出版社長を有罪にした(1957年)。ところが、伊藤による全訳は現在、新潮文庫として大手を振って流通している。一方、文学作品や芸術活動がわいせつ罪で処罰される一方、日本はポルノ産業の「先進国」として批判されることも多い。この奇妙な状況を意識しつつ、チャタレイ事件最高裁判決の再検討を通じて、性的表現の自由に対する規制のあり方について考察する。
5 11/04 「君が代」起立斉唱と教師の良心の自由 入学式・卒業式の際の「君が代」斉唱の際の不起立を理由として多くの教員が懲戒処分を受けた。この問題について最高裁は、起立斉唱を命ずる職務命令は個々の教員の良心の自由を間接的に制約するが、儀礼的な所作として行うことを命じても憲法に違反しないと判示した(2011年)。自らの良心に反する行為を「儀礼的な所作」として行うように個人に命じること、そのような命令を唯々諾々と受け入れる個人が増えることの問題性を、シェークスピア『リア王』の知見をも借りつつ検討する。
6 11/11 国民主権と象徴天皇制 大日本帝国憲法において「神聖不可侵」の主権者であった昭和天皇は、日本国憲法の下で「象徴天皇」へと変身した。日本国憲法制定時の論争、戦後政治における運用、そして現在の状況を踏まえて、象徴天皇制をめぐる憲法問題について、国民主権との関係を重視しつつ検討する。
7 11/18 衆議院の解散と民主主義 日本国憲法は、衆議院による内閣不信任案の可決もしくは信任案の否決の場合のみ内閣による衆議院の解散を認めているが(69条)、歴代の内閣は69条所定の場合以外で「党利党略」による解散総選挙を実施してきた。日本におけるこれまでの運用と学説の議論動向、そして比較憲法的な知見を踏まえて、衆議院の解散の限界について検討する。
8 11/25 戦後政治史の中の憲法9条 「戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認」を定める憲法9条は、「護憲派」からは称賛され、「改憲派」からは罵倒されてきた。「軍隊を持たずに国を守れるか」レベルの抽象論で考えるのではなく、冷戦の最前線という地理的・歴史的条件の下であった戦後政治史の中で、憲法9条の意義と課題を考える。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は、12月2日(水)を予定しております。

テキスト

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長谷部恭男『日本国憲法』(岩波文庫)(ISBN:978-4003403310)日本国憲法と大日本帝国憲法の条文が手元にあれば、本書を購入して頂く必要はありません。ただし、ポツダム宣言等の資料も収録されており、長谷部教授の解説も充実しているので、本書がお手元にあると便利だと思います。

講師紹介

愛敬 浩二
早稲田大学教授
1966年東京生まれ。博士(法学、早稲田大学)。専門分野は憲法学・比較憲法。名古屋大学教授等を経て2020年4月から早稲田大学法学部教授。比較と歴史の観点を重視して日本国憲法を研究している。主な著作として、『政治文化としての立憲主義―日本国憲法への一つの接近』(日本評論社、2025年)、『立憲主義の復権と憲法理論』(日本評論社、2012年)、『改憲問題』(ちくま新書、2006年)、『近代立憲主義思想の原像―ジョン・ロック政治思想と現代憲法学』(法律文化社、2003年)等がある。
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